【授業紹介】高2基礎研究・花王株式会社様との連携授業「歯磨剤と歯ブラシの科学 ~むし歯予防に効果的な『はみがき』を身につけよう​~」

 高校2年生の学校設定科目として開講している『基礎研究 (教科: 理科)』では、今年度は年間を通じて花王株式会社さんと連携し、授業を展開します。連携授業を通じて、以下の3点の目的の達成を狙っています。

 (1) 高校理科の内容とキャリアとの関連を知り、現在と未来を繋ぐ
 (2) 探究の授業 (高2生は、個別テーマによる課題研究を実施) で発揮できるような探究スキルを高める
 (3) 企業で研究職を勤める方のリアルなキャリアデザインを参考に、自身のキャリアデザインをソウゾウ (想像・創造) する

連携授業の第5回目となる10月16日 (木)の授業では、花王株式会社において研究職を勤める山本 様と山岸 様から「歯磨剤と歯ブラシの科学 ~むし歯予防に効果的な『はみがき』を身につけよう​~」という「体と心のヘルスケア」に関わるテーマで講演をしていただきました。
今回の授業では、生徒たちが科学的な視点から健康と生活習慣との関係を学び、日常生活に活かす力を育むことを目的としています。

前半の授業では、「なぜフッ素入りの歯みがき粉がむし歯予防に効果的なのか」ということをテーマに実験を行いました。
生徒たちは、歯の主成分であるヒドロキシアパタイト (HAp) の粉末を用いて、この中に乳酸を加えた際、フッ素の有無による酸への溶けやすさの違いを観察しました。
試薬を入れた直後は大きな変化が見られず、「あれ…?」というような表情を浮かべていましたが、容器をよく振り混ぜてから観察すると、フッ素入りの方では歯の溶け出しが抑えられることが確認でき、「おぉー、すげぇー!」といった歓声が沸き上がりました。
フッ素が歯を “酸に強い構造” に変化させ、むし歯を防ぐメカニズムを目で見て確かめることができました。
また、世界保健機関 (WHO) や厚生労働省が推奨する「フッ素入り歯みがき粉の使用」が、科学的根拠に基づく予防法であることも学びました。

後半の授業では、歯ブラシの構造や機能に焦点を当てた実験が行われました。
生徒たちは、一般的な歯ブラシと「すき間対応設計」の歯ブラシを用いて、模型上で歯みがき粉の届き方を比較しました。「すき間対応設計」の歯ブラシでは、横から観察すると毛先が歯と歯のすき間にしっかり入り込んでおり、フッ素をむし歯の好発部位に効率よく届けられるということが分かりました。
 単に「磨く」だけでなく、「どんな形状のブラシを選ぶか」「どのように動かすか」といった視点の重要性を実感する内容となりました。

授業のまとめでは、むし歯予防のための効果的な歯みがき法として、

  ① フッ素入り歯みがき剤を 1 g 以上使うこと
  ② 2分以上かけて奥歯から丁寧に磨くこと
  ③ すすぎは少量の水で1回だけ行うこと

といった内容が紹介されました。

授業後の感想では、「今まで何となく磨いていたけれど、根拠を知ると意識が変わった」「今日から自分の歯ブラシの選び方を見直したい」といった声が聞かれました。

質疑応答の時間では、『古くなった歯ブラシは毛先がたわんでくるため、毛先を切って使用することはできますか?』といった驚きの質問が出てきました。
その質問に対して、『毛先を切っての使用は、メーカーとしては推奨しません!笑』と断言されましたが、『メーカーとしては推奨はしないものの、毛先を切ったものを実際に使用して、磨き心地などを実際に体験してみると学びが深まるかもしれませんね!』と回答されました。
さらに、『歯ブラシのたわみは、歯ブラシの毛の長さの3乗、直径の4乗に比例する』といった豆知識も教えていただきました。
授業の最後には、受講者全員に花王 様の「すき間対応設計」の歯ブラシをプレゼントしていただきました!

今回の授業は、企業研究と学校教育の融合を通して、科学的探究の楽しさと社会での応用を体験する貴重な機会となりました。花王 様が行う製品開発や研究の一端に触れたことで、生徒たちは「科学が人の暮らしを支えている」ということを実感することができました。
(担当:内田<理科>)