【高1研修旅行】 3/2〜6四国アート思考研修(後編)〜愛媛・香川・岡山で心の動く出会いを〜

前回に引き続き、個別のテーマによる課題研究に向けた、「自分」の発見を目的とする高校1年生「アート思考研修」のご報告です。
路面わずかに雪の溶け残る鳥取を出発し、瀬戸内海の先へ辿り着いた生徒たち。何を感じ、何を見つけたのでしょうか。研修旅行の引率教員がリポートします。

研修3日目(3月5日木曜日)は早朝から愛媛県久万町海岸山の道を登りつめ、四国お遍路の一つ岩屋寺での阿字観を体験しました。瞑想を通して心静かに自分と向き合うことを目的に、この阿字観体験が旅程に組み込まれました。
学校行事あるあるの早起きだけでもつらい。加えて登山もキツい!と、登頂を果たすもグロッキーな生徒たち。疲れを全身で表現しつつも、クラスメイトを気にかけて背中を支える共成の姿もありました。

休憩を挟み、いざ、阿字観体験です。
新築の木材の香りのする離れのお堂の二階の仏間に並ぶ、紫の丸い座布団。正面には大きな不動明王の絵。黄土色の袈裟に、ぴんとした背筋のご住職。鉦と、その隣に掲げられた謎の書。これは梵字の「阿(あ)」つまり始まりの音を表しています。手と足を組み、深く呼吸しながら「阿」の字を見つめて、ついには心の中に「阿」を見出すのが阿字観なのだそうです。
3分、5分と阿字観をして、生徒たちの空気感が変わるのが傍目からも感じられました。鉦の響きや山にさえずる小鳥の声を耳にしながら、「阿」と自分を見つめた生徒たち。
最後にご住職は、ご自身が僧侶になった経緯をお話してくださりました。生徒たちは、それぞれ状況こそ違えど、進路について目下悩み中。ご住職のなかなかに波瀾万丈な人生のお話をきき、「すごくよかった。自分が聞きたかった話をきけた」と感想を述べる生徒もいました。深い呼吸を繰り返して精神を集中し、身も心も整ったようです。

さて、登る時には苦労した山道をらくらくと下山してバスに乗り込み、午後は道後へLet’s Go!ここ俳句の都 松山では、散策しながら俳句をつくりあげる吟行、それらの作品を鑑賞して「一番好きな俳句」を決める句会ライブで大いに盛り上がりました。
この吟行体験と句会ライブは松山市立子規記念博物館さんをお借りして松山はいく事務局さんにご企画いただいている、四国アート思考研修の恒例行事です。研修旅行前の言語文化の授業で短歌や俳句に親しんだ生徒たちの中には「昨日の時点で2句よみました!」と気合い十分な子も。
もちろん、このような俳句熱の高い生徒ばかりではないですが、松山はいくガイドさんたちの「12文字を埋めて、5文字の季語を付け足したら俳句は完成します!」というアドバイスと温かな声かけで、引率教員含めた全員が、ここまでの研修旅行を振り返った俳句を詠むことができました。提出時刻のギリギリまで粘って言葉を吟味する生徒たちの姿に、密かに感動する引率教員でした。

そんなこんなでみんなが詠んだ俳句すべてに目を通し、句会ライブの司会をしてくださるのは家藤正人さん。テレビ番組『プレバト』でおなじみ夏井いつき先生の息子さんです。明るいハリのある声と気さくなオーラを発する家藤さんにマイクを向けられると、生徒からぽんぽんととコメントが生まれてきます。
この句の作者はこんな気持ちだったんじゃないか、ここで描かれている人は何歳くらいだろうか、この言葉はどこにかかっているだろうか。お喋りのような雰囲気で、自分達の作った俳句を楽しみます。
たとえば、コミカルで共感を呼ぶ「朝ごはん食べすぎてギブ春の昼」(全日、ホテルの食事バイキングがとてもとても美味しかったのです)
あるいは、道後の名所と季節の自然を詠み込んだ「どっしりと構える湯神社春の草」(湯神社の読みは「ゆじんじゃ」)「白サギの見据える先の空は春」(道後温泉本館は白サギが各所にあしらわれています)
魅力的な作品の中で、特に評価された句は以下のとおり。

 優勝 森の中黙る8分山笑う (阿字観で流れた時間がいかにうつくしかったか、上述のように書かなくとも、この一句で伝わりますね。俳句のすごさです)
 入賞 さかみちを腕組みくだる春の虹 (道後は坂の多い町。この腕を組んでいるのはどんな人・どれくらいの歳だと思いますか?)
 入賞 梅の花香るは空のロープウェイ (初春の陽気を松山城のロープウェイでゆくのびやかさに溢れていますね)
 入賞 瓦灼く端に三千歳の熱がある (夏の季語「灼く」で歴史の風格といまだ続く活気へのリスペクトを感じます)

句会ライブは作者を伏せた状態で鑑賞、投票を行い、その場で一番の俳句を決める趣向。優勝の生徒が照れつつも誇らしげに立ち上がると、会場が沸きました。この熱気のおかげか、ライブ後に「もっと投句したい!」との声を聞きつつ、ホテルへの帰路となりました。

密度の濃い3日目を終え、最終日(3月6日金曜日)はまず香川の高松市美術館へ。
1日目で訪問した、古今の美術作品のレプリカを展示する大塚国際美術館とは異なり、作品に手で触れず・写真に撮らず、作品の現物をじっくり鑑賞する体験です。
常設展では讃岐の漆器や現代アート作品の鑑賞に挑戦。生徒から特に印象深いとの感想が上がった作品は、現代美術作家 飯川雄大氏の「デコレータークラブ―0人もしくは1人以上の観客に向けて」でした。作品を体験した生徒によると、鑑賞者の目の前にあるハンドルを、動かなくなるまで回すように指示があり、回すと吊り下げられたカバンが上昇/下降する作品とのこと。ハンドルに注目して手を動かす間、回し手の視界からカバンは逃れていきます。ゆえに、回し手の他に鑑賞者がいなければ、動くカバンを見る人はおらず、鑑賞者は0人になる。本記事執筆者が見逃した作品でしたが、生徒の説明を聞き、なるほど!と思えました。高1は英語の時間で、アート鑑賞をして説明と解釈を英語でアウトプットする活動をしています。普段の学びの効果が表れた場面でした。
特別展では、『天空の城ラピュタ』や『じゃりん子チエ』『時をかける少女』などの作品に背景美術で参加してきたアニメーション美術監督 山本二三の原画が展示されていました。何気なく見てきたアニメの背景だからこそ、原画の魅力や存在感を驚きと共に発見できたようです。他の学校の生徒さんも制服姿で鑑賞に来ており「前にいた子が近づいてじっくり見ているのを真似してみたら、花が点線で描かれていることに気がついた」と、他の鑑賞者から学びを得た生徒も。知らない人と空間を同じくする美術館ならではの鑑賞体験ですね。

続いて最後の目的地、岡山 倉敷美観地区へ。昼食の自由行動で、揚げたてのカレーパンや、顔の半分ほどもある大きなお煎餅、春の旬のいちご大福など、さまざまなグルメを満喫する生徒たち。グルメだけでなく、デニムや雑貨など、おしゃれなグッズにも目がきらきら。
倉敷といえば、歴史ある街並みで有名ですね。この倉敷とよく間違えられるのが鳥取の「倉吉」です。名前が似ていて、白壁づくりの街並みが共通する倉敷本通り商店街と倉吉銀座商店街は、姉妹協定を結んでもいます。地元の白壁土蔵のまち「倉吉」と比較しつつ「倉吉は水路が走り、倉敷は中心に川が通っていて、川を走る船が印象的だった」「おちついた雰囲気が鳥取と似ていた」など、親近感を覚えた生徒もいたようです。

帰りのバスでは「長いようで短かった」「楽しかったなあ」「ずっと一緒だったから解散がさびしい」などの言葉もきこえました。研修中に様々な物事に出会い、いいことも、困ったことも、生徒たちはいろいろに心を動かしたようです。
探究の根っこにある「自分の心が動く対象との出会い」を実感するアート思考研修を糧に、これからも探究・共成・飛躍の力を深めていってほしいです。
今回の研修旅行でお世話になりました、各団体・施設、四国の皆様、ありがとうございました!