【授業紹介】高2言葉と表現・やさしさは翻訳できるか?―ベトナム・インドからの留学生と考える「やさしい日本語」
2023年度より新しく、高校2年生の選択授業として『言葉と表現』という学校設定科目を設置しました。授業は国語科と英語科の教員が担当し、「言葉に関する理論や観点を理解し、それを元に言葉や言語作品について解釈し、他者に向けて表現することで、言葉や文化を知的に楽しみ、多様な人々に共感する力を養うこと」を目標としています。
今回のテーマは「やさしい日本語」。
日本語を母語としない人々との円滑なコミュニケーションを支える方法として注目されている概念です。
授業ではまず、阪神淡路大震災での情報伝達をきっかけに広まった背景や「なぜ普通の日本語では伝わらないのか」という課題を学びました。
その上で、「ワセダ式ハサミの法則」(短く切る、主語を入れる、語順を変える、わかりやすい語を選ぶ)を用いて、身近な文章をより理解しやすい表現に書き換える練習を行い、文法や語彙を意図的に調整する技法を体験しました。
さらに、鳥取大学地域学部に留学中のベトナムとインド出身の学生を招き、直接インタビューを実施しました。
来日のきっかけがジブリ作品であったことや、飲食店のメニューに写真がなく翻訳アプリでもイメージがわかりにくいというエピソード、学業には必要な日本語を理解できても病院や市役所、銀行で使われる専門的な日本語が難しいという実感、お金の単位や漢字・オノマトペの習得に苦労していることなど、リアルな体験談が語られました。
生徒たちは「英語より日本語の方が話しやすい」という意外な言葉に驚き、予定時間を延長して次々と質問を投げかけました。インタビューを通じて、教科書や机上では見えにくい「伝わらなさ」の具体的な姿に触れたことは、生徒にとって大きな発見となりました。
この学びをもとに、次回からは「伝わらない日本語」を「やさしい日本語」に言い換えるロールプレイづくりに挑戦します。
生活の中で実際に起こり得る場面を脚本化し、失敗例と成功例を対比させながら、言葉の持つ力を実感する活動へとつながっていきます。
(担当:石田<英語科>・岡田<国語科>)



