【授業紹介】中1理科・鳥取県西部地震を探究しよう!(探究スキルラーニング「Earthquake Caster 〜2000.10.06〜」 実践紹介)
中学校1年生の理科において、地震に関する単元の学習を実施しました。この単元では、自然現象の理解に加えて「言語を駆使して伝わる表現をする力」の育成を目的とし、探究スキルラーニングに取り組みました。
今回の探究テーマは、「あなたがニュースキャスターだったら、2000年10月6日起こった『鳥取県西部地震』をどのようにリポートするか」です。
生徒一人ひとりがニュースキャスターとなり、鳥取県西部地震が発生した日に自分が居合わせたと仮定して、どのように情報を伝えるかを考えながら、地震に関する多角的な学びを進めていきました。
単元の導入では、実際の地震報道を扱ったニュース番組を視聴しました。
生徒たちは、「地震の現状を正しく伝えるためにどのような情報が必要か」「震度・震源といった似た言葉をどのように正しく使い分けるか」といった視点で報道内容を分析し、情報伝達における言葉の選び方や表現方法について学びました。
続いて、「地震を伝える『波』とは何か?」という問いを深めるため、ストローを使った“ウェーブマシン”を用いて、地震波の伝わり方を視覚的に理解する活動を行いました。追加の実験では、地震を伝える波にはP波(初期微動)とS波(主要動)の2種類があることにも触れ、両者の違いや特徴についての理解を深めました。
実際の地震に関するデータにも触れました。
鳥取県や気象庁が発表している情報をもとに、2000年に発生した「鳥取県西部地震」について調査を行い、マグニチュード・震度・被害の規模・発生時刻などの基本的な情報を整理しました。さらに、地震計の記録による地震到達時刻から震源地を予測する活動や、初期微動継続時間と震源距離の関係性についても学習しました。



さらに、『日本海新聞』や『朝日新聞』の記事データベースを活用して、2000年10月上旬に掲載された当時の被害状況や支援の様子についても調べました。
理科の授業の中で、NIE(Newspaper in Education)の枠組みに沿った学習活動を展開し、「今起きていること」と「これから起きること」の2つの視点で記事を読み解くことで、情報の整理力や分析力を養いました。普段はあまり馴染みのない新聞にも、生徒たちは色分けやマークをつけながら集中して取り組んでいました。





新聞記事から生まれた疑問や調査の過程で浮かんだ問いをもとに、生徒たちは事前に質問を用意し、日本技術士会所属の伊藤徹さんを講師に迎えて出前授業を受けました。
テーマは「地震災害:その前とその時、何ができる?」です。鳥取県西部地震の発生直後の状況、他の大規模地震との比較、地震発生時の行動指針など、専門的な観点から丁寧に解説していただきました(本授業は、鳥取県自主防災活動アドバイザー派遣制度を活用して実施)。
生徒たちは、事前に調べた情報をもとに「具体的な問い」を自分の言葉で投げかける姿を見せ、伊藤さんの回答を受けてさらに理解を深めていました。
授業後半では、「液状化現象」のモデル実験にも挑戦しました。砂と水を入れたプラスチック容器を揺らし、建物に見立てた物体が傾いたり、埋まっていたものが浮かび上がったりする様子に、生徒たちは驚きと関心を持って観察していました。視覚的・体験的な理解によって、教科書だけでは得られない実感を伴う学びにつながりました。















次の授業では、これまでの学習を振り返りながら、「そもそも、なぜ日本は活火山や地震が多い国なのだろう?」という問いをもとに、全員で探究を進めました。
まず、防災科学技術研究所(NIED)のホームページから地震の分布の特徴を捉え、そこから規則性が見られることに気づきました。
続いて、プレート境界と地震・活火山の分布との関係を調べるために、オンラインデータベース「ジャパンナレッジSchool」の中のコンテンツ『日本学習地図ライブラリ 主題図版』を活用しました。操作を通して、震源地が海溝よりも大陸側に多く分布していることを各自が発見しました。
さらに『世界学習地図ライブラリ 主題図版』も参照し、世界地図とプレートの位置、震源の位置を重ねて観察することで、地震分布の規則性を改めて実感することができました。
ここまでの学びによって、ニュースキャスターとして地震を伝えるための準備が整いました。いよいよ、次の授業からはニュース番組の収録に入ります。




単元のまとめとして、生徒たちはグループごとに、地震速報を伝えるニュース番組の制作に取り組みました。地震に関する基本的な情報(マグニチュード・震度など)や被害の状況、そして視聴者がどのように行動すべきかといった内容を盛り込んだ報道番組形式で構成されており、正確かつ客観的に情報を伝えるため、生徒たちは原稿作成の段階からこれまでの学習を丁寧に振り返っていました。
完成した番組映像では、どのグループも学びを活かした表現ができており、「伝える力」としての言語運用能力の成長がうかがえました。
今回の探究スキルラーニングを通じて身につけた力が、今後の探究的な学びの場面でも活かされていくことを期待しています。
このあと、中学校1年生の理科では、化学分野の学習へと進んでいきます。
(担当:理科/兼重)






