【授業紹介】高2基礎研究・花王株式会社様との連携授業「心の健康は『レジリエンス』にあり? ~心と身体の関係を通した自己理解~」

高校2年生の学校設定科目として開講している『基礎研究 (教科: 理科)』では、今年度は年間を通じて花王株式会社さんと連携し、授業を展開します。連携授業を通じて、以下の3点の目的の達成を狙っています。

 (1) 高校理科の内容とキャリアとの関連を知り、現在と未来を繋ぐ
 (2) 探究の授業 (高2生は、個別テーマによる課題研究を実施) で発揮できるような探究スキルを高める
 (3) 企業で研究職を勤める方のリアルなキャリアデザインを参考に、自身のキャリアデザインをソウゾウ (想像・創造) する

連携授業の第6回目となる今回の授業では、花王 株式会社の感覚科学研究所より、高橋 様・眞田 様・左達 様をお招きし、『心の健康は「レジリエンス」にあり? ~心と身体の関係を通した自己理解~』というテーマでご講演およびワークショップを行っていただきました。
今回の授業は、「心と身体はどのようにつながっているのか」「自分の感情は身体にどのような影響を与えているのか」といった科学的視点から、自分自身を見つめ直すことを目的としています。

前半の授業では、まず「心と身体のつながり」をテーマに、呼吸や心拍などの生理反応を可視化する実験を行いました。
気になるその実験とは… 危機一髪ゲームでおなじみの「番犬 ガオガオくん」です!笑 
2人の男子生徒に協力してもらい、腹部に巻いた呼吸ベルトや胸元に取り付けた心拍センサーを用いて、自分の緊張状態やリラックス状態によってグラフの波形が変化する様子をリアルタイムで観察しました。
 
最初は「この波形って本当に変わるの?」と半信半疑の様子も見受けられましたが、ゲームに挑戦すると、ガオガオくんが噛みついた瞬間に心拍が一気に上がり、「えっ、めっちゃ上がってる!」「緊張バレるじゃん!」といった声が上がりました。
普段意識することのない自律神経の働きが、感情と強く結びついていることを体験的に学ぶことができました。
さらに、神経がどのように情報を伝えているのか、交感神経と副交感神経がどのようなときに働くのかについて、脳や神経の図を用いながら解説していただきました。「気持ちが落ち込んでいるときには呼吸が浅くなる」「緊張すると汗が出たり心拍が上がる」というように、心の変化が身体の反応として表れるしくみを理解しました。

後半の授業では、「レジリエンス (心の回復力)」に焦点を当てたワークを行いました。
レジリエンスとは、『落ち込む気持ちを無理に抑え込むのではなく、しなやかに回復していく力』のことです。生徒たちは、感情を4つの領域に分類した「感情円環」を用いて、自分が落ち込んだときにどのような行動や環境が心を回復させてくれるのかを振り返りました。

「音楽を聴くと落ち着く」「部活動の仲間と話すと切り替えられる」「お風呂に入って深呼吸すると楽になる」など、日常の中にすでにある “回復アイテム” に気づく姿がとても印象的でした。
生徒の中には、“回復アイテム” として、授業担当者である「うっちー」と記入している生徒もいました!笑

そして授業の最後には、複数の香りビーズを組み合わせて自分だけの「回復の香り」をつくるワークを行いました。
香りを担当する脳の部位が、感情や記憶に深く関わる海馬・扁桃体と直結しているという説明を聞き、生徒たちは「だから香りって気持ちに関係あるんだ!」と納得した様子でした。
隣同士で香りを交換しながら、「これめっちゃいい匂い!」「自分は柑橘系が落ち着くん!」と楽しそうに作業する姿が見られました。

授業後の感想では、「自分の気持ちにこんなに身体が反応しているとは知らなかった」「しんどいときに何をすれば回復できるかが分かった」「香りで気持ちが変わるのが意外だった!」といった声が聞かれました。
普段は “気合いで乗り切る” と表現してしまいがちな心の状態を、科学的に捉え直す貴重な機会になったようです。

心と身体の関係を科学的に学ぶことを通して、生徒たちは「自分の心を大切に扱う視点」や「しんどさを回復するための方法」を新しく見つけることができました。
花王 様にご協力いただいたことで、生徒たちは科学と日常生活、そして将来のキャリアがつながる体験をすることができました!
(担当:内田<理科>)